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これからの旅館。

by 城崎温泉 富士見屋

 段階的に営業を再開しています。

 町全体で休業していた城崎温泉も、6月のはじめから旅館やお店が少しずつ営業を再開。うちは少しゆっくりめに、6月末から営業をはじめました。

 薬もワクチンもなく、予防方法は「人の接触を極力減らす」。現状での旅館業における「新型コロナウィルス対策」も手探り状態で、情報も日々変わりゆく中で何が正解がわかりません。旅館を再開し、お客様をお迎えする準備をするにも考え始めたらきりがなく、なかなか気の重い事案でした。主人と話し合いを重ね、感染する可能性がある中で働く不安を従業員にヒアリングするなどしながら、なんとかカタチにした対策ガイドラインはあくまで暫定版です。実働しながらお客様や現場の意見を取り入れ、ブラッシュアップしていきます。

 富士見屋の対策ガイドラインはお客様の感染予防をまず第一に、従業員の健康も守りながら、少しでも安心してお過ごしいただける「安全な場」にすることを考えて作りました。しかし、わたしたちが最大限に準備と努力をしたとしても、やはりお客様の協力が必要不可欠です。誤解を恐れずに言えば、その日にたまたま集う見知らぬ人々とひとつ屋根の下で一宿するということは、時間も含めて宿に付帯するさまざまなものを共有するということ。つまり、これまでは非日常感や癒しを得られていた旅行や宿泊そのものが「感染リスクを伴う行為」であり、お客様にはまずそのことをご理解していただいた上でお越しいただかなくてはなりません。もちろん、ご滞在中は我が家のように寛ぎ、またいつでも訪ねられる親戚の家のように思っていただきたい、その願いはこれまでと変わりません。それでもやはり旅館は「自宅」ではなく、不特定多数の人が集う場所であることは変えようのない事実で、お部屋以外の共用部分や温泉街の中では「自分が保菌しているかもしれない」という大前提のもと「人にうつさない、人からもらわない」ことを念頭においた行動をお願いするしかないのです。ただ、大切な人をウィルスから守りたいと思うのと同じように、ひとりひとりがその日そこに集う他のお客様のことも、願わくば当館の従業員へも気持ちをも寄せていただければ、こうした状況下でもみんなが心地よい「これからの旅館」を作れるんじゃないだろうか。若女将として、そんな風に考えています。

 正直なところ、いまの当館においては従来当たり前だった「至れり尽くせりなサービス」の提供はかないません。お客様によっては違和感を感じられる方もいらっしゃるでしょう。チェックイン時の検温、マスクの着用、手指のアルコール消毒などに加え、

・歯ブラシと髭剃り用カミソリの持参

・お客様自身によるゴミの分別廃棄

・靴や下駄などお履き物の自己管理

までお願いするのは、きっと当館だけでしょうし、「旅行に来てまでこんなことをなぜ自分でしなければならないのか」「せっかくコロナを忘れてリラックスしにきているのに」、そんな風なお叱りうけることも覚悟しています。それでも、「お客様にご協力をお願いする」と決めたのは、日々お客様に接し続けるわたしたち自身が、ウィルスを媒介してしまわないためには不可欠だったからです。偉い人は感染しないなんてことはなく、ウィルスの下においてはみな平等で、互いに互いのことを思い遣りながら共有されている場の中で行動すること。感染拡大を防ぐには想像力と思い遣りしかないのではないか。数ヵ月の自粛期間を経て、そんな風に思うようになりました。

 せっかくのご旅行でお客様がもやもやとした気持ちを抱かれることがないように、公式ホームページはもちろん、予約サイト等でもできる限りの方法を使って「お客様へのお願い」を記しました。今後は、お電話でご予約確認をすることでチェックインをスムーズにしたり、ご希望の方には事前に資料をお送りしたり、非接触のコミュニケーションを増やしていく予定です。お部屋置きのツールはもちろん、ホームページでの情報発信も充実させたいし、できなくなったことの分だけ……いいえそれ以上にできることを広げていきたい。この世界で同時に、みんなに訪れた大きな変化の機会をみすみす逃してしまうのではなく、困難な中にも小さな希望を見出して「これからの旅館」をつくっていければ。試行錯誤の中、迷惑をおかけしてしまったときはどうか、お気持ちを教えてください。

 

富士見屋 若女将

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